2015年7月23日木曜日

日本の国立競技場とロンドンのオリンピックパーク

日本の国立競技場がちょっと大変なことになっていますね。

でも日本のことだから、きっと最後にはきちんと間に合うように立派な競技場が建てられると確信しています。

今回、国立競技場をデザインしたのはザハ・ハディドさん。
今回の顛末で、たくさんの日本人が彼女の名前を覚えたんじゃないかな?
イラク出身でしかも女性。

たくさんの女性建築デザイナーが世界にいるとは思います。
でも私が聞いたことがあるのは彼女くらい。

初めに名前を知ったのは2000年。
ミレニアム祭の時かな?

それ以降ハイドパークのギャラリーや、チェルシーのギャラリー、東ロンドンの学校、そしてオリンピックのアクアティックセンターなど、建築関係のお客様を幾度もご案内する機会に恵まれました。

数でいえば、オリンピックのアクアティックセンターが一番多い。

日本の国立競技場が彼女のデザインになるって聞いたときは、ロンドンとの共通点だと思ってちょっとうれしかった半面、そんな大きなもの作れるのかなって疑問も浮かびました。

彼女のデザインは通常とてもきれいな流線型。
真直ぐなものよりも、カーブのあるものは作るのが大変。
デザインする側と違って、実際に施工する人の手間が予想外にかかる場合が多いのです。

だから、今回ザハさんの事務所が発表した、
「コストがかさんだのはデザインのためだと伝えられたのは間違いで、デザインは、日本の建設業者の標準的な材料や技術を使って、JSC=日本スポーツ振興センターの設定した予算に見合うものだ」
(NHK のウェブニュースから抜粋しました)
というのは、ちょっと甘いと思います。



だって、ロンドンのアクアティックセンターの時にも似たような問題がありましたから。

日本で彼女のデザインに決まった時に、これが考慮されたのかどうかは知りません。
でもロンドンのオリンピックのアクアティックセンター、当初の予算は75ミリオンポンドでした。

ちょっとわかりやすいように1ポンド200円で計算しますね。
75ミリオンポンドは150億円です。

ザハのデザインに決まって、その直後に実際は150ミリオンポンド(300億円)はかかるという試算になりました。
敷地に対してデザインが大きすぎることで、担当省がデザインの見直しを通達した裏には、もちろん見積もりを縮小させる目的もありました。

ところがそれでも費用は214ミリオンポンドという請求が施工会社からありました。
214ポンドって、428億円です。

「最初の150億円という数字はどこに行ったの」ってカンジでしょう?

ところがそれでも足りなかったんですよ。
結局は242ミリオンポンドかかりました。
それって円だと484億円です。
3倍以上になったわけ。

だから、招致段階で1300億円なら、ロンドンの結果を踏まえると4000億円くらいになる可能性は当初から無いとは言えなかったかも。

白紙に戻して正解だったと思います。


それでもザハの建築はきれいです。
工事費が高くなるのはデザイン優先で実際の工事の苦労がわかってないから。

これ、知っている人が結構少ないんだけど、アクアティックセンター、材料はなんだと思いますか?


これ、木製なんです。
メインはガラスと木。

信じられないでしょう?
こんな色ですからね。

天井も木製。
ちょっとアップしますね。
ひとつひとつの木のパネルが、違う角度にカーブしているんです。
そしてそれをすべて合わせて一つの波のうねりにしている。

もう芸術作品といっていい。

ザハじゃなくって、実際に木をひとつひとつカーブさせた木工職人さんに拍手。

技術は確かに不可能ではないし、素材ももちろん調達可能。
だけど、「日本の建設業者の標準的な材料や技術を使う」って言っていいのかな?
こんな風に作るんだったら予算オーバーは当たりまえだと思うのは私だけ?


因みにホプキンスの作ったベロドロームもきれいです。
 こちらは色目ですぐ木だってわかりますよね。
こちらは誘致時の予算が40ミリオンポンド。
結果は倍の80ミリオンポンドで出来上がりました。

何でも予定通りに進む日本で、物事を白紙に戻すのは勇気がいる行為だったと思うけれど、時には必要だと思います。

2020年、東京オリンピックが成功しますように!



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